蒼い日々の中で

オーストリア、ザルツブルクで指揮者になる修行中の水野蒼生が綴る散文たち。

O.E.Tがクラウドファンディングをする理由。

東京ベスト9と庶民オケ

東京は意外にも世界で稀に見るオーケストラ過密都市だ。まず在京のプロオケがこの街には9つもある。

この東京ベスト9の下にはアマチュアオケや学生オケは五万とあるし、プロの寄せ集めのオケだって結構あるもんだ。

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そしてその大量の庶民オケの全てが集客に頭を悩ませながら日々企画を進めている。

例えば、1000人のホールで70人のオーケストラが演奏する。それでも半分以上の席がガラガラなんて事も結構よくある話なんだ。

「え、70人もいるんでしょ?1人が10人呼べばとりあえず700人埋まるじゃん?…余裕じゃん!」

…なんて思うかもしれないけれど、これが本当に大変なんだ。

オーケストラというのは演奏する群衆で、その群衆の一員となってしまうと中々派手な宣伝はしにくかったりもする。

運営側の人間は、フライヤーを楽器店やCD屋に置いてもらって、SNSで必死に告知して、最大限に動くけれど、それでも客席を見渡せば実際は身内だらけ。

ライブハウスを渡り歩くバンドマンのように「じわじわファンを増やして、いずれは武道館行ってやるぜ!!!」なんて発想すらオーケストラには無いものなんだ。(そんなアツい発言をする人間は大抵煙たがられる。)

 

東京のクラシックファンの大半は庶民オケには興味は無くて、彼らは東京ベスト9の方へ流れてしまう。

そりゃ、プロは勿論上手いし、世界的な指揮者やソリストだって呼べるんだ。そんなマジモンには敵わない。

ベスト9とは違う世界で生きている僕らは今日もとても小さい市場での集客合戦を小さな火花を散らせて繰り広げている。

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クラシック界の外側を見よう

そんなオーケストラ超過密地区、東京で僕らはO.E.Tを立ち上げた。

「凄腕若手プレイヤーが集結!」なんて謳い文句だけれど東京ベスト9には敵わないし、今はまだ全然庶民オケのひとつだ。

でも僕らはこの狭い市場の中での集客合戦を繰り広げるつもりは無いんだ。

じゃあどうするか?

そう、僕らが東京で産声をあげた理由はクラシック界の市場を拡大することなんだ。

クラシック音楽の入口というポジションに立って、

「ちょっと興味はあるけど、中々聴く機会がないんだよね〜。」

と思っている人たちにこの音楽の素晴らしさを存分に届けていく。

そんな入口のオーケストラになることが僕らの目標なんだ。

 

クラウドファンディングでオーケストラ!?

そこで僕らが選んだシステムが、クラウドファンディング。

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クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」でプロジェクトを立ち上げ、支援を募り、そのリターンという形でチケットを販売する。

僕らO.E.Tは、そんなクラウドファンディングを利用した新しいチケット販売システムに手を出してみた。

「今流行りのクラウドファンディング」という特殊性は話題にも繋がり、不特定多数の人にこのプロジェクトも見てもらえると思ったんだ。それも、クラシック界の外側の多くの人たちに。

 

「自分たちで資産家に当たって地道に資金を集めた方が堅実だ。」

僕らだって勿論そう思う。でもそれでコンサートがすんなり開けたとしても、結局のところそれはやっぱりクラシック界の中で身内と小さな市場にしか届けられない。

リスクがあったとしても広い世界に声を届けることを僕は選んだ。入口のオーケストラになるために。

プロジェクトが成功すればメディアからの注目も集められる。成功したところからが僕らの本当の挑戦なんだ。

 

目標金額、80万円。そんなに必要?

オーケストラのコンサート、実は結構お金がかかる。

派手な舞台演出や照明は無いにしろ、小さな会場ではオーケストラは入りきらないから大きな会場が必要だし、なにより奏者の数も多い。

・ホール代

・ホールの設備代(椅子や譜面台、ひな壇など、使った備品の数だけお金がかかる)

・ティンパニなどの個人が所有し得ない打楽器のレンタル

・オーケストラの練習場所の施設費

・楽譜

・メンバーの交通費

そんなものを全部ひっくるめてやっと、80万。
実際のところこれが必要最低経費。

 

リスクは承知。それでも新しい世界を見たい。

プロジェクトオーナーなんて名乗っているけれど、所詮ただの1人の音大生、ビジネス経験なんて無いし、クラウドファンディングだって勿論初めてだ。

しかも今月まで欧州にいて自分の足で歩いて資金調達も出来ない。

そんな僕がプロジェクトを立ち上げたことは本当に大きな、スリリングな挑戦だと思う。

2月から準備を始めて、1日もこのプロジェクトの事を忘れた日なんて勿論無いし、毎日不安に押しつぶされそうになりながら忍耐力を試されている。

それでもそこにクラシックの未来を広げる可能性があるなら、理想を叶える可能性があるのなら、挑戦しない手は絶対に無いから。

全体からしたら小さなことだけれど、このプロジェクトが成功したらそれは、クラシック界の新時代の幕開けを意味するって僕は本気で思ってる。

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そしてその時はライブハウスを渡り歩くバンドマンのように、
「じわじわファン増やして、サントリーホール、いや武道館まで行ってやるぜ!」って心の底から叫びたい。

 

 

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コンサートに向けクラウドファンディング実施中です!チケットもこちらのサイトからお求め頂けます。是非一度ご覧くださいませ。

凄腕若手プレイヤーが集結!東京からクラシックをアツくするオーケストラ計画! - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

【コンサート詳細】
O.E.T結成記念公演"Opening "
出演者 O.E.T
ゲストヴァイオリン奏者: マキシム・ミシャリュク
チェロ奏者:三井静
指揮者/ピアノ奏者:大井駿
指揮者: 水野蒼生
会場 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール(渋谷駅から徒歩5分)
日時2017年7月20日木曜日18時30分開場 19時開演
全席自由 一律3000円
主催 O.E.T
お問い合わせ orchestra.ensemble.tokyo@gmail.com
O.E.T公式サイト http://orchestra-ensemble.tokyo/
公式twitter https://mobile.twitter.com/o_e_tokyo
公式Instagram https://www.instagram.com/orchestra.ensemble.tokyo/