蒼い日々の中で

オーストリア、ザルツブルクで指揮者になる修行中の水野蒼生が綴る散文たち。

東京ピアノ爆団 2ndリサイタル プレイバック No.5

本編を全て終えてザワザワと熱狂するフロアを前にステージからは再び轟音のピアノが鳴り響き始めた。

この夜を彩ってくれた3人のピアニスト、鶴久龍太、三好駿、高橋優介の3人6手によるヘンデルの「ハレルヤ」。誰もが一度は絶対に耳にしたことのあるヘンデルのオラトリオ「メサイヤ」の中の一曲だ。

元々はオーケストラと合唱による大編成の作品だが、タケルがこの日のために3人での連弾用にアレンジ譜を書いてきてくれた。

 f:id:aoi_muzica:20170518183516j:imagePhoto by Hirokazu Takahashi 

フロアは笑顔でいっぱいだった。キラキラ輝くハレルヤは頭上の2つの大きなスピーカーからガンガンと鳴り響き、その音楽に所々から歓声が上がり、歌声もステージに飛んでくる。お客さんの中には歌手の方も何人かいたみたいで本気の合唱もちらほらと聴こえる。ミラーボールは相変わらずギラギラと回り続け、ステージには楽しそうに連弾する3人のピアニストと、観客を煽るバカなMCが1人、マイクをフロアに向け「ハレルヤ」でコールアンドレスポンスをしてはしゃいでいた。

 f:id:aoi_muzica:20170518183547j:imagePhoto by Hirokazu Takahashi 

音楽は更にハレルヤのフレーズを畳み掛けてラストスパートをかけ、この大饗宴を終わらせる和音が鳴り響く。その和音が長く響く中で溢れる喝采はこの夜で最も温かさに満ちていた。

 

この日のお客さんの数は111人。椅子とテーブルがフロアに出ていたとはいえ、ほぼ満席の状態だった。

 

東京ピアノ爆団は別に今までのクラシックのスタイルを否定している訳では無くて、ただ新しい楽しみ方を提案しているだけだ。静かに音楽だけが生存する環境でじっくり集中して聴きたい人はコンサートホールに足を運べばいい。でもこんな風にワイワイ盛り上がってクラシックを聴きたい人の居場所もあったって良いじゃないか。

東京ピアノ爆団という新しい楽しみ方があったって良いじゃないか。

そんな思いから「試しにやってみるかあ」と昨年始めたこの企画も既に2回目を終えた。まだまだ可能性は無限大だし、これから大きくなる予感しかしない。

 f:id:aoi_muzica:20170518183906j:imagePhoto by Hirokazu Takahashi 

さあ来年の3rdリサイタルはどんな企画にしようか。今から夏にメンバーとミーティングするのが楽しみでしょうがない。またすぐに新しいニュースを届けられるだろうから、それまで暫く待っていて下さい。そして、東京ピアノ爆団じゃなくても音楽はあらゆる所で楽しめるから、是非この機会にピアノ曲でも手に取ってみてはどうだろう。

 

最後に僕たちは肩を組み大勢のお客さんにお辞儀する。何度も何度も、その拍手に応えてお辞儀をした。

 f:id:aoi_muzica:20170518183655j:imagePhoto by Hirokazu Takahashi 

 

どれだけの人が未だにピアノ爆団のプレイバックを読みたいと思っているか分からない中だったけれど、なんとか長い時間をかけてこうして書き終える事ができて良かった。

 

思えば今年立ち上げたこのブログ、今までピアノ爆団の事しか書いていなかったけれど、これでようやく次のテーマに進めそうだ。2月の雪の日の思い出を綴る中で季節は随分と動いていて、ここザルツブルクは既に初夏の天気となっている。いや、これまでに色んな事があったんだ。早くそれを書きたくてウズウズしている。

 

まあ何はともあれ、合計5本の記事となった東京ピアノ爆団2ndリサイタルのプレイバックはこれで幕を閉じます。

来年の3rdリサイタルでまたお会いしましょう。