蒼い日々の中で

オーストリア、ザルツブルクで指揮者になる修行中の水野蒼生が綴る散文たち。

東京「ピアノ」爆団

東京ピアノ爆団への思いを書き殴る記事の第二編。

 

「ピアノ」

 

もしも世界で音楽家って存在があなた一人しかいなくなって、これからあなたが好きな楽器をひとつだけ選び、それを弾き続けるとしよう。

 

そうしたらあなたはどの楽器を選ぶ?

僕だったら、間違いなくピアノを選ぶ。


楽器の王様とも言われたりするこの楽器。
その由縁は色々とあるけれど、確かに1人で演奏する上でここまで奏者個人を表現できる楽器は他に無いと思う。

 

壮大でドラマチックな物語もロマンチックな詩も、語りたいことは基本的に全て表現出来る。それも、1人で。

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Photo by Kotaro Yamamoto

このピアノの音の世界は他者の存在を許さない、まさに奏者がひとりで作り上げる世界で、その等身大な音楽に混じる人間臭さが僕は好きなのかもしれない。

 

勿論バンドやオーケストラや合唱も僕らにリアリティのあるエモーショナルな音の世界をいつも魅せてくれていて、もはや聴いている自分なんて小さな存在を忘れそうになったりもするけれど、それは演者側の複数人がその世界のパーツとなって作りあげる世界で、音に付随する人情とか、人間臭さみたいなものはあまり感じない。

 

オーケストラみたいな複数人の数えきれない感情が混ざり合った世界の色彩も物語も僕は好きだし、その世界が僕の専門であったりもするんだけどね。でもそればっかりが続くのはまるで、ずっと人混みの中で色んな人の話を聞いているみたいで聴く側もそれなりにエネルギーが必要なんだ。


その騒がしい世界に疲れて何も聴きたくなくなって、無音の部屋でベッドに寝転がったままでいる日もある。

 

でもそんな精神状態でも誰か1人が紡ぎだす別世界に心を浸したくなるような夜も確かにあって、時にはピアニストが静かに語る物語に微睡みの中で耳を傾け、時には彼の心に燃える炎で暖をとり、時には共に光を追いかけてみたくなるんだ。

 

ピアニストが大爆音でピアノを鳴り響かせるライブハウスは、まるでピアニストが作り出す別世界を増幅させたような異空間。その日そこに集まった人達はそれぞれにピアニストが作るその別世界に思いを馳せ、そして共有する。

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Photo by Kotaro Yamamoto 

例えば、夏の草原に誰かと寝転がって同じ星空を眺める時に湧き上がる微笑みのように、冬のコタツで大勢で鍋をつついて幸せを感じるように、ピアノが奏でる音の世界も誰かと一緒に共有出来たら、その幸せや感動もきっと増幅されてあなたの中に響いてくるのかもしれない。

 

それにこの日はタイプのまるで違うピアニストが3人出るからね、一夜で三つの世界を体験できる、きっと美味しい夜になると思う。

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東京ピアノ爆団2ndリサイタル

2017年2月9日 at スターパインズカフェ

詳細は公式Twitter @piano_bombs まで。