蒼い日々の中で

オーストリア、ザルツブルクで指揮者になる修行中の水野蒼生が綴る散文たち。

人生の恩人であるフレディ・マーキュリーの命日に思うこと。

11月24日。

意識してこの日を迎えるのも今年で12回目。24歳の僕にとってちょうど人生の半分だけ、この日は僕にとって特別な意味を持っている。

 

11月24日。

フレディ・マーキュリーの命日。僕が生を受ける3年前の1991年のこの日、僕がもっとも尊敬する音楽家は45歳の若さでこの世を去った。

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QUEENに出会ったのは11年前の秋だった。

中学2年生、「洋楽聴いてるオレ」に憧れて、近所の図書館で適当にCDを借りてきた。その中の1枚にQUEENの「Greatest Hits Ⅲ」があった。その1枚は決して「洋楽聴いてるオレ」をかっこよく演出してくれることは無かったけれど、その後の僕の人生を大きく変えてしまう力を持っていた。

 

「とんでもないものに出会ってしまった」

その力強くも儚い美声、オーケストラ並みの壮大な力を持つバンドサウンド、その壮大な世界観に一気に引き込まれた。聴いているだけでゾクゾクさせられ、鳥肌が止まらなかった。

それ以前の僕はQUEENのQの字もフレディも知らず、We Will Rock Youの曲名すら分からずに「ウィーアー、ウィーアー、ラッキー!」と歌ってたド素人だったが、その1枚は13歳の僕を完璧にROCKしてしまった。

 

そこからののめり込み具合は凄かったと思う。

中学生の間に全オリジナルアルバムを集め、
伝記を読みあさり、
ライブ映像の上映イベントがあるたびに映画館に足を運び、
アダム・ランバートを客演で迎えたサマソニ公演、そして2度のEUツアーに参戦した。

自分一人でボヘミアンラプソディを多重録音したこともある。

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2015年1月、ウィーン公演を最前列で参戦

 

QUEENに出会ってから人生が変わった。
そこからジャンル、新旧を問わずにさまざまな音楽を聴き漁ることを覚えた。それはクラシック以外の音楽のカルチャーを知るきっかけになり、自分のアルバム名には「We Will Classic You」というサブタイトルを付けさせてもらった。(実際それのおかげでインタビューでQUEENのことを聞いてもらえている。)

 

そんな人生の恩人のQUEEN、そしてフレディ。彼の命日は毎年いつも一人で爆音でアルバムを聴いたりライブ映像を観たり、静かな追悼式を勝手にやっていた。今年までは。

 

 

映画ボヘミアンラプソディで爆発的QUEENブーム。

もちろんファンとしてこの映画を長年待ちわびてきたけれど、ここまで大きなムーブメントを起こすことになるとは思ってもみなかった。

インディーから追っかけてたバンドがメジャーでバカ売れするってこういう気持ちなのか……(笑)

ちょっと驚きもあるけれど、QUEENに関するコンテンツが莫大に増えたので嬉しいことだらけ。友人たちに布教できるきっかけも増えたしね。

 

実際ボヘミアンラプソディは本当に素晴らしい映画だった。

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20年間に及ぶバンドの歴史と数え切れないエピソード、それを2時間の中に自然に綺麗にまとめたその脚本力!「ご本人ですか……??」と言いたくなる至極の演技を魅せた最高の俳優陣。そして何よりも画面から伝わってくる製作陣のQUEEN愛!

実際には史実と大きく異なる点や時系列のパラドックスも多い (フレディのソロもそんなに悪いもんじゃないぜ!) が、「そんなことどうでもいい!」と筋金入りのファンでも両手放しで賞賛を送る。

 

その理由は、現役のQUEENメンバーの二人が全面的に監修していること。

 

バンドの歴史を知り尽くしているファンは史実とちょっとでも違うとツッコミたくなるものだ。
でもその製作陣にオリジナルのメンバーがいて、ブライアン・メイは実際に「これは伝記映画を超えたアート作品だ」と賞賛の声を送っている。彼ら2人が携わり認めたものなら、それならば!と細かいことは気にせずに純粋に作品を楽しみ、そして大手を振って賞賛を送る事ができる。
なんてスマートなファンサービスなんだろう!!!

 

まあ実際にこの映画は本当に素晴らしいのだけれど!

11月24日。

僕が意識して過ごす12回目のフレディの命日。今年は新旧大勢のファンとともに応援上映で泣いて笑って歌って、天国のフレディに感謝を届けたい。

 

 

 

僕がクラシカルDJとしてメジャーデビューした理由

 

本文を書き始める前に、まず最初に言わせてほしい。

 

一番驚いたのは僕だ。

 

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賞歴もない、知名度もない、日本国内での学歴だって高卒どまり。

 

ただちょっと奇抜なアイデアがあって、それを猪突猛進で形にする意地があるだけだ。

 

そんな自分がまさかドイツグラモフォンからアルバムを、しかもドイツグラモフォン120年の歴史上初の、というか全世界史上初のクラシックのDJミックスアルバムを堂々リリースする事になるだなんて、「なんのドッキリだ????」

 

という感じに、このプロジェクトを任されたときはスケールの大きさに戸惑ったりもした。

 

仮に今の自分が、1年前の自分の元に現れて現在のネタバレをしてもきっと「冗談言ってないでやる事やれよ」と一蹴されるだけだと思う。

 

でもそれが今こうしてドヤ顔で自作のアルバムを片手にリリース日を迎え、「俺はコイツでクラシック界の風穴を開けてやるんだ!」と息巻いているのだから、人生ってのは本当に面白い。

 

そんな僕の、この気持ち悪いドヤ顔が生まれるまでの経緯をこれから書いていこうと思う。

 

 

 

ことの始まりは今年の2月。ザルツブルクの大学の1ヶ月間の休暇で一時帰国をしている時の話だ。

 

帰国してすぐ、自分が主催する「東京ピアノ爆団」の3度目の公演があった。いつもの吉祥寺はスターパインズカフェで、いつも以上にお客さんの入った熱い夜。

 

f:id:aoi_muzica:20180905120654j:plain©︎Mugi Murata

 

自分のDJパフォーマンスを終え、いつものように客席の後ろで他のメンバーのステージを観ていると、DJ良かったです」と声をかけられ、名刺をもらった。

 

これが僕とユニバーサルミュージックの出会いだった。

 

そこでドイツ・グラモフォンが今年120周年を迎えたこと、そのための新しい企画を探していることをざっと聞いて、後日詳しい話を聞きにユニバーサルの本社に伺った。

 

僕とレーベルの間には「クラシック音楽の入り口を開く。」という共通した意志があったので大幅なすり合わせや妥協はなかった。

そしてこの短い日本滞在の間にアルバム製作の話はすんなりまとまり、4月のイースター休暇で帰国し、ジャケットの撮影をする事が決まって再び僕はザルツブルクに戻った。

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というのがこの大プロジェクトの始まりだった。

 

ここでもう一度言わせてほしい、

 

一番驚いたのは僕だった。

 

いや、頭では確かに理解していたんだ。うん。直接的には、なんとかギリギリ。

 

でもただの学生にとっては現実味があまりにも無さすぎた。

 

話がデカすぎてついていけない気持ち。

 

「これって本当に俺の人生なの?」

 

それと同時にだんだん「クラシック界最大の老舗レーベルの名を背負う」というプレッシャーも自分の中でじわじわと大きくなっていく。

 

頭で理解できても心が追いつかない。そんな日々が長らく続いた。

 

 

もちろん、それはとても、とーっても嬉しいことであったし、確かに僕が描いていた夢のひとつだ。でもそれはもっとじわじわとキャリアを積んでからの話だろうと思っていたんだ。一応これでも現実的な性格だから、自分の身の丈は十分分かっている筈だった。

 

「そうだ、これはドッキリだ、ドッキリに違いない!!!!」と心の何処かでずっと思っていた。

 

周りの友人に話すにも話せず、延々と自問自答をしているうちに3月の暮れ、イースター休暇が訪れた。

再びの帰国のための荷造りをしている時も、心の中では「これは多分大掛かりなドッキリだ!」と囁く悪魔がいて、そのドッキリ悪魔を心に抱えながら空港に向かう。

 

それでも先方が手配してくれたチケットで何不自由なくチェックイン出来るし(当たり前だし、失礼な話だけれど)ゲートにも難なく入れてしまった。そして日本行きの飛行機の座席に腰をおろした瞬間にようやく理解した。

 

「………ドッキリじゃない!!!???」

 

ひと月半遅れでようやく心の疑念も晴れて、すべてを心で理解した。

 

そうだ、クラシックの入り口を開く人間として選ばれたのは、僕なんだ。

 

ライブハウスにクラシックを持ち込み、クラウドファンディングでオーケストラを作り、ひたすらクラシックを同年代に当たり前に聴いて欲しいという願いと、クラシックを広めるという勝手な使命感を持って発信し続けてきた自分が選ばれたんだ。

 

自分にしか出来ないことなんだ。

 

疑念が晴れたということは、覚悟を決めることと同義でもあった。

 

クラシック界最大のレーベルの旗を背負い、先陣を切ってクラシックの入り口を開いていく。

その責任ある使命に真正面から向き合い、プレッシャーを心の中で飼いならす、その覚悟を自覚するための時間だと思えば、ひと月半という時間は決して長いものでは無かっただろう。

 

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それからはひたすらに自分の信じる芸術を作り続けるだけだった。ザルツブルクでは学業以外の時間はほぼ全てこれに費やし、日本では生活の些事すべてを投げ捨て昼も夜も命をかけて作り続けた。

 

そうして完成したのが、Millennials -We Will Classic You- - Aoi Mizuno なんだ。

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製作作業はただただ孤独なものだったけれど、使わせてもらったDGのアーティストたち、そしてその曲を生み出した作曲家たちみんなと一緒に作った気持ちで、いまでは「自分の作品」というより「自分たちの作品」という気持ちが大きい。

 

そんな僕らのアルバムが遂に今日から全国で発売開始となった。

 

一部の人たちに小難しく批評されるよりも(それが賛美であろうと)、僕の願いはこの作品が広く多くの人たちに聴いてもらえることだ。「クラシック興味あるんだけど、色々難しくて何から聴いていいか分からないんだよね~」なんて思ってる人は実は多い。そんな人たちにとってこれが入り口になれば僕は本望だ。

 

昨夏、僕は「クラシックの入り口、開きます。」というキャッチコピーでクラウドファンディングに挑戦した。そして今、このアルバムが「クラシックの入り口」だと、自信を持ってドヤ顔で言える。

 

俺はコイツでクラシック界の風穴を開けてやるんだ。

 

 

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水野蒼生オフィシャルWEBサイト

www.universal-music.co.jp

日比谷線はこれから延々と「トリスタンとイゾルデ」を流し続けろ。

久々にニュースを見てめちゃくちゃに怒っている。

 

【日比谷線、車内BGMを試験導入 クラシック音楽で「より快適に」】
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1801/24/news115.html

 

クラシックがナメられている。なにが、「より快適に」だふざけるな。

 

もちろん、個人的に電車内でクラシックを聴くことはしょっちゅうある。満員電車に揉まれていても別世界に逃げることができた。

 

でもここで問題なのは、全ての人に対して強制的にそれを聴かせることだ。

f:id:aoi_muzica:20180126080940j:image(ITMediaより)

クラシックに興味の無い人からしたら、いずれドビュッシーの月の光は「日比谷線テーマソング」になり下がり、耳にする度に満員電車の情景が脳裏に浮かび、最悪の場合クラシック音楽がまとめて嫌われる可能性もあるわけだ。

 

「とりあえずクラシックでも流しておけばいいだろう」なんてアイデアは音楽に対して愛も知識も何もないクソったれにしか浮かばない。

少なくともこの提案には音楽に対して微塵のリスペクトも愛もない。

 

そもそも、クラシック音楽=癒されるという極端に偏ったイメージが社会に台頭していることが諸悪の根源、一番の間違いなんだ。

 

クラシック音楽は癒されるものではない。

それは何世紀にも渡って人々の心に強いメッセージを届け、

ありとあらゆる感情や森羅万象を表現でき、

今もなお世界中の人々を繋げる力を持った文明史上最も長くヒットし続けているモンスターミュージックなんだよ。

 

これなら最近の、中国でヒップホップに禁止令が出たことの方がまだ音楽が浮かばれる。

 

【中国、ラップ禁止令 反体制化を警戒か】
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018012301001969.html

 

国が音楽の力で転覆されることを本気でビビってる。


不当に廃絶された音楽家達が「はいわかりました辞めます」と言う筈が無い。これからヒップホップは廃絶どころか更に面白いところに向かっていくと思う。

 

クラシック地下鉄BGM化計画は中国ヒップホップ禁止令より遥かにひどい仕打ちだ。

 

クラシック音楽が持つ力とルーツをナメないでくれ。ヒーリング音楽として消費しないでくれ。

 

間違っても鉄の箱にぎゅうぎゅうに押し込められた人々のストレス緩和剤みたいな用途に使われる音楽ではない。

 

どうしても車内にクラシック音楽を垂れ流したいのならいっそ、ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」を流して4時間の演奏時間ずっと途切れることのないなんとも言えない緊張感を車内に提供してほしい。

 

そうしたらイヤフォンもせず耳を傾けて乗ってやる。

O.E.T結成記念公演"Opening"

ありとあらゆる感情が詰まった7月が終わった。

7月20日、僕らのベートーヴェンが渋谷に鳴り響いた夜から10日ほど経って、O.E.Tロスも身体的疲労も落ち着いて、今ようやくO.E.T結成記念公演"Opening"について文章を書き始める事が出来ている。

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企画を始めたのが1月で、
2月の帰国時にホールを抑えメンバーを集め始め、
3月にはコンセプトとロゴを決め、
4月からクラウドファンディングの準備を始め企画書を何枚も書いた
5月にはフライヤーも完成してクラウドファンディングが始まって
6月はクラファン関係で死に物狂いになりながら沢山取材をして頂いた


そして7月にはクラウドファンディングが成功、遂にO.E.Tが集まり4日間12時間ほどのリハーサルを終え、当日のホールには一階席ほぼ満席のお客さんと、鳴り響いた僕らのベートーヴェン。
公演は大成功、O.E.Tは最高のオープニングを飾る事が出来た。

簡単に書けばこんなもんだけれど、この半年間の中、どれだけのストーリーがあっただろう。

いずれそれは本にでも書いてやりたいと思っているけれど(笑)

とにかく本当に命掛けの半年間だったんだ。
だからこそ公演が成功した事が本当に嬉しかったし、終演後のオケの皆んなとお客さんの表情を見てその成功が自己満ではないことも分かって涙腺が緩んだ。

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小さくてもクラシックの入口を開く事が出来たと僕は思ってるし、開かれた扉の先の世界を、音楽を皆んなに観てもらえたと思う。
それに現在の僕らの出来る100%のベートーヴェンを夏の渋谷の夜に響かせることが出来たと自負してる。

僕は10代の頃からずっとベートーヴェンを愛していると公言してきたけれど、人前でちゃんとベートーヴェンの交響曲を指揮したのは実はこれが初めて。
好きだからこそ、リスペクトしていたからこそ、怖くて逃げていた。
長い間の葛藤からようやく自信と覚悟が出来て、ベートーヴェンと自分を向き合わせる事が出来た、そんな英雄だったんだ。

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それを聴いて、僕らがベートーヴェンに挑む姿をみて、何かを感じてもらえたのなら、僕らの音楽と思いを伝えられたのなら、このO.E.Tの旗揚げ公演は自己満ではなく社会的にも成功したんだと思っている。

もちろん演奏と運営共にまだまだ課題は山積みだけれど、その課題こそがO.E.Tを続けていくモチベーションとなっている。立ち上げることよりも続けることの方が大変という言葉は色んな所で聞くけれど、僕らO.E.Tなら大丈夫。とりあえずここから運営チームを結成してしっかりとシステムを構築、強くするために組織化を徹底していく。

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何はともあれ、今回の成功はもちろん僕の力ではなくて応援してくれた本当に多くの人のお陰なんだ。
あの夜に素晴らしい景色と音楽が在ったのは僕に関わってくれたあなたがいたから。僕1人じゃ勿論無理だった。

・日本にいない自分の代わりに色々動いてくれた両親
・クラウドファンディングのみならず全ての動画を作ってくれた愛基
・クラウドファンディングのメンターとして支えてくれた久田
・サイコーの写真を撮り続けてくれたミツモトケイスケ
・クラウドファンディングの文章校正から広報まで担当してくれた田代姉妹
・素晴らしいイラストを描いてくれたゆのさん
・自ら頼んだわけでもないのにO.E.Tの取材をして記事を書いてくれた友亨、柑橘さん、中川さん、日経の池田さん
・パート譜をザルツから東京に持ち帰ってくれた火ノ川
・当日スタッフを担当してくれた皆さん、
・もう1人の指揮者として支えてくれた駿
・全身全霊で弾いたトリプル協奏曲の後なのに全力で英雄を弾いてくれた三井とマキシム
・最大限にオケを引っ張ってくれたコンミスの晶世さん
・今回乗ってくれたオケの皆んな
・最高の音楽を残してくれたベートーヴェン
・そしてクラウドファンディングで支援してくれた皆さんと当日聴きに来てくれた皆さん

関わってくれた全ての人に、改めてお礼申しあげます。

お陰様でO.E.Tは最高の形でのスタートを切る事が出来ました。

本当にありがとうございます。

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荘厳に見える門の前に立つお茶目で気さくな門番として、O.E.Tはこれからもクラシックの入口を開き続けます。

今後ともO.E.Tをよろしくお願いします!

O.E.T代表
水野蒼生

 

All Photos by Keisuke Mitsumoto 

【全てはここに書いてある】O.E.Tを知るための3本の記事

日本に帰って来た。

梅雨の嫌になる蒸し暑さにもまだ懐かしさを愉しみながら、一日中バタバタ動いていた帰国初日だった。

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もうかれこれ此処に文章を書くのは約20日ぶりになる。

ありがたいことにO.E.Tに協力してくれる人達が、素晴らしい文章で僕の思いをそれぞれのブログや記事で綴って伝えてくれた。

それは僕がこのブログに書き殴る拙い文章なんかよりもスッと読めて、且つ内容の密度が高い素晴らしい物だった。


だから正直に言えば僕にはもう書くことが無かったんだ。

 

今日はそんな、O.E.Tや僕について書いて貰えた記事を紹介していこうと思う。

 

www.tomotrp.com

ヴュルツブルグにトランペットで留学している齋藤友亨と出会ったのは最近の事。(というかまだ面と向かって会ったことは無い。)
彼は留学生活や音楽に関連するブログを書いていて、1年間で20万PVを記録する人気ブロガーの顔も持っている。

そんな人気ブログに彼は水野蒼生の半生を記したインタビュー記事を書いてくれた。

他人に自分の人生をまとめて細かく喋ったのは勿論初めてだったけれど、僕という人間を知りたければこの記事を読んでもらうのが1番早い、今や名刺代わりの一本。

俺の宝物です、友亨ありがとう。

 

hoppingnaranja.hatenablog.com


跳ねる柑橘さん。

以前僕がこのブログに書いた「第九の歌詞を超訳」した記事( 第九の歌詞を超訳してみたらエモすぎた件。 - 蒼い日々の中で )を読んでパトロンになって下さったプロのライターさん。
パトロンになって下さっただけでなく、ご自身のブログになんと2本もO.E.Tに関する記事を書いて頂いた。

その中の2本目に書いて頂いたインタビュー記事ここでは紹介したい。


友亨が書いてくれたものは「水野蒼生の全て」だとしたら、跳ねる柑橘さんが書いてくれたものは「O.E.Tの全て」
結成前夜の話からデザインに関するコンセプト、選曲の意図、何もかも語らせてもらえた。こちらも超大作なんだけれど、その長さを感じさせない構成には素直に驚いた。

本当にありがとうございます。

 

日本脱出の指揮者 クラウドファンディングで国内始動|エンタメ!|NIKKEI STYLEstyle.nikkei.com

]

そして7月1日。

なんと日経新聞の電子版にO.E.Tの記事が掲載された。
今回取材して下さった池田卓夫さんは歌手のアンナ・ネトレプコなど世界一流のアーティストを取材してきた正真正銘、超大物の音楽ライターさんで、僕の長年の仲の評論家の方がご紹介下さり、この取材が実現した。

7月1日。日本時間の早朝に記事が発表され、デイリーランキング総合9位、エンタメ欄1位を取り、その日は緊張で手が震えた。

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翌日にはヤフーニュースにも掲載されたが、このコメント欄ではしっかりと批判コメントが湧いていて、初めて見ず知らずの人に叩かれる経験をした。
ショックはあったけれど、僕の周りには界隈に叩かれる向こう見ずな先駆者が多いので「ようやく俺も芽が出てきたな」 綴るっていうのが正直な気持ち。

そんな感じで学期末にも関わらずネット上では有難い事に大盛り上がりとなった訳だけれど、ここからが本当のスタート。

ネットだけじゃない現実世界で僕の思いを人に伝える番が来た。直接的にコミュニケーションが取れる幸せをここまで実感したことは無いかもしれない。

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クラウドファンディング終了まであと5日。

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O.E.T結成記念公演"Opening"まで16日。

 

まだ梅雨明けの兆しもない湿度たっぷりの東京。

そんな街をこれから少しだけ、更に暑くしていこう。

ベートーヴェンと共にね。

 

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あと4日!!!

コンサートに向けクラウドファンディング実施中です!チケットもこちらのサイトからお求め頂けます。是非一度ご覧くださいませ。

凄腕若手プレイヤーが集結!東京からクラシックをアツくするオーケストラ計画! - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

【コンサート詳細】
O.E.T結成記念公演"Opening "
出演者 O.E.T 
ゲストヴァイオリン奏者: マキシム・ミシャリュク 
チェロ奏者:三井静 
指揮者/ピアノ奏者:大井駿 
指揮者: 水野蒼生
会場 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール(渋谷駅から徒歩5分)
日時2017年7月20日木曜日18時30分開場 19時開演
全席自由 一律3000円
主催 O.E.T
お問い合わせ orchestra.ensemble.tokyo@gmail.com
O.E.T公式サイト http://orchestra-ensemble.tokyo/
公式twitter https://mobile.twitter.com/o_e_tokyo
公式Instagram https://www.instagram.com/orchestra.ensemble.tokyo/

O.E.Tがクラウドファンディングをする理由。

東京ベスト9と庶民オケ

東京は意外にも世界で稀に見るオーケストラ過密都市だ。まず在京のプロオケがこの街には9つもある。

この東京ベスト9の下にはアマチュアオケや学生オケは五万とあるし、プロの寄せ集めのオケだって結構あるもんだ。

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そしてその大量の庶民オケの全てが集客に頭を悩ませながら日々企画を進めている。

例えば、1000人のホールで70人のオーケストラが演奏する。それでも半分以上の席がガラガラなんて事も結構よくある話なんだ。

「え、70人もいるんでしょ?1人が10人呼べばとりあえず700人埋まるじゃん?…余裕じゃん!」

…なんて思うかもしれないけれど、これが本当に大変なんだ。

オーケストラというのは演奏する群衆で、その群衆の一員となってしまうと中々派手な宣伝はしにくかったりもする。

運営側の人間は、フライヤーを楽器店やCD屋に置いてもらって、SNSで必死に告知して、最大限に動くけれど、それでも客席を見渡せば実際は身内だらけ。

ライブハウスを渡り歩くバンドマンのように「じわじわファンを増やして、いずれは武道館行ってやるぜ!!!」なんて発想すらオーケストラには無いものなんだ。(そんなアツい発言をする人間は大抵煙たがられる。)

 

東京のクラシックファンの大半は庶民オケには興味は無くて、彼らは東京ベスト9の方へ流れてしまう。

そりゃ、プロは勿論上手いし、世界的な指揮者やソリストだって呼べるんだ。そんなマジモンには敵わない。

ベスト9とは違う世界で生きている僕らは今日もとても小さい市場での集客合戦を小さな火花を散らせて繰り広げている。

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クラシック界の外側を見よう

そんなオーケストラ超過密地区、東京で僕らはO.E.Tを立ち上げた。

「凄腕若手プレイヤーが集結!」なんて謳い文句だけれど東京ベスト9には敵わないし、今はまだ全然庶民オケのひとつだ。

でも僕らはこの狭い市場の中での集客合戦を繰り広げるつもりは無いんだ。

じゃあどうするか?

そう、僕らが東京で産声をあげた理由はクラシック界の市場を拡大することなんだ。

クラシック音楽の入口というポジションに立って、

「ちょっと興味はあるけど、中々聴く機会がないんだよね〜。」

と思っている人たちにこの音楽の素晴らしさを存分に届けていく。

そんな入口のオーケストラになることが僕らの目標なんだ。

 

クラウドファンディングでオーケストラ!?

そこで僕らが選んだシステムが、クラウドファンディング。

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クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」でプロジェクトを立ち上げ、支援を募り、そのリターンという形でチケットを販売する。

僕らO.E.Tは、そんなクラウドファンディングを利用した新しいチケット販売システムに手を出してみた。

「今流行りのクラウドファンディング」という特殊性は話題にも繋がり、不特定多数の人にこのプロジェクトも見てもらえると思ったんだ。それも、クラシック界の外側の多くの人たちに。

 

「自分たちで資産家に当たって地道に資金を集めた方が堅実だ。」

僕らだって勿論そう思う。でもそれでコンサートがすんなり開けたとしても、結局のところそれはやっぱりクラシック界の中で身内と小さな市場にしか届けられない。

リスクがあったとしても広い世界に声を届けることを僕は選んだ。入口のオーケストラになるために。

プロジェクトが成功すればメディアからの注目も集められる。成功したところからが僕らの本当の挑戦なんだ。

 

目標金額、80万円。そんなに必要?

オーケストラのコンサート、実は結構お金がかかる。

派手な舞台演出や照明は無いにしろ、小さな会場ではオーケストラは入りきらないから大きな会場が必要だし、なにより奏者の数も多い。

・ホール代

・ホールの設備代(椅子や譜面台、ひな壇など、使った備品の数だけお金がかかる)

・ティンパニなどの個人が所有し得ない打楽器のレンタル

・オーケストラの練習場所の施設費

・楽譜

・メンバーの交通費

そんなものを全部ひっくるめてやっと、80万。
実際のところこれが必要最低経費。

 

リスクは承知。それでも新しい世界を見たい。

プロジェクトオーナーなんて名乗っているけれど、所詮ただの1人の音大生、ビジネス経験なんて無いし、クラウドファンディングだって勿論初めてだ。

しかも今月まで欧州にいて自分の足で歩いて資金調達も出来ない。

そんな僕がプロジェクトを立ち上げたことは本当に大きな、スリリングな挑戦だと思う。

2月から準備を始めて、1日もこのプロジェクトの事を忘れた日なんて勿論無いし、毎日不安に押しつぶされそうになりながら忍耐力を試されている。

それでもそこにクラシックの未来を広げる可能性があるなら、理想を叶える可能性があるのなら、挑戦しない手は絶対に無いから。

全体からしたら小さなことだけれど、このプロジェクトが成功したらそれは、クラシック界の新時代の幕開けを意味するって僕は本気で思ってる。

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そしてその時はライブハウスを渡り歩くバンドマンのように、
「じわじわファン増やして、サントリーホール、いや武道館まで行ってやるぜ!」って心の底から叫びたい。

 

 

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コンサートに向けクラウドファンディング実施中です!チケットもこちらのサイトからお求め頂けます。是非一度ご覧くださいませ。

凄腕若手プレイヤーが集結!東京からクラシックをアツくするオーケストラ計画! - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

【コンサート詳細】
O.E.T結成記念公演"Opening "
出演者 O.E.T
ゲストヴァイオリン奏者: マキシム・ミシャリュク
チェロ奏者:三井静
指揮者/ピアノ奏者:大井駿
指揮者: 水野蒼生
会場 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール(渋谷駅から徒歩5分)
日時2017年7月20日木曜日18時30分開場 19時開演
全席自由 一律3000円
主催 O.E.T
お問い合わせ orchestra.ensemble.tokyo@gmail.com
O.E.T公式サイト http://orchestra-ensemble.tokyo/
公式twitter https://mobile.twitter.com/o_e_tokyo
公式Instagram https://www.instagram.com/orchestra.ensemble.tokyo/

 

第九の歌詞を超訳してみたらエモすぎた件。

 

なあ兄弟。こんな音じゃなくてさ、
一緒に気持ちよくこの喜びを歌おうぜ。 

 

喜び。


それは、美しい神々の放つスパークと、楽園からの乙女。

 

僕たちは火を飲む覚悟で、その天上まで登ってやるよ。

 

時代に隔てられたもの達を、あなたの魔法が再び一つに束ねるところを見たいんだ。

 

そして僕らは全員、あなたの翼に優しく包まれて本当の兄弟になるんだ。

 

この賭けに乗っかった世界中の同士達、そして愛する人を見つけた君も、一緒に喜びを歌おうぜ。

 

そうだ!一人ぼっちの君もだよ、一緒に喜びを歌おうぜ。

 

そうすりゃ「卑屈な想い」なんてものは泣きながらどっかに行っちまうから。

 

大自然が喜びを飲み込んでいく。


善人も悪人も関係ねえ、皆んなその薔薇の跡を辿ってそこにいけ

 

その先で甘いキスと一杯のワイン、そして最強の友が君たちを待っている。

 

虫ケラにだって最高の喜びを!

 

だって、遂に天使が神の前に現れたんだから。

 

なんて心地良いんだ。


まるで太陽が空を縦横無尽に駆け回っているみたいな気分だよ。


なあ兄弟、君は自分の道を走れ!


そして勝利を得た英雄になるんだ。

 

それから抱き合おう。


そしてこのキスを世界中に届けるんだ。

 

星空の上には神がいる。

 

それを知って君たちはひれ伏すのかな?

 

そして世界は万物創造の神の存在を認めるのかな?

 

星空を見上げて探そう。


この上にこそ、僕らの喜びはあるのだから!

 

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自分で書いてみて、ただひたすらゾクゾクする。

今、めっちゃ興奮してる。エモすぎる。


この歌の和訳なんてググれば死ぬほど出てくる訳だけれど、どれも直訳過ぎたり、古い言い回しが多くてそのまま読んでも意味が分かりづらいんだ。

だから自分なりの解釈で現代語に超訳してみたんだけれど、なんだこれは。。。

良い歌詞過ぎかよ。

美しさ100点、高揚感100点、心に響く度120点。

間違いなく最&高。

 

この詩は元々、18世紀のドイツの詩人フリードリヒ・フォン・シラーが書いた「歓喜に寄せて」という詩なのだけれど、最初の一節、太字になっているところはベートーヴェン本人が付け加えた歌詞で、この一節こそベートーヴェンがこの曲に込めたメッセージそのものなんだと思う。

 

ベートーヴェンはこの詩に22歳の時に出会い、感激した。

そして54歳になり、ようやく彼はこの詩を自分の中に飲み込んで、彼の9つ目の交響曲として、詩に別の形で永遠の命を与えたんだ。

 

この詩はただベートーヴェンが音楽を付けただけの物ではなくて、ベートーヴェンという1人の男の人生を共に歩んできた彼の相棒のような存在だったのかも知れない。

 


そういえば、この夏にベートーヴェンの曲だけを演奏するオーケストラのコンサートがあるんだ。

僕らが今年立ち上げた新しい若手オーケストラの旗揚げ公演がそれだ。

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「クラシックの入口を開くカギとなるオーケストラ」として、僕らは東京からクラシックをこれから若手代表として盛り上げていく訳だけれど、

音楽の新時代を切り拓いたパイオニアであり、何より生きるエネルギーに満ち溢れているベートーヴェンの音楽はそんな僕らの船出にもっとも相応しいと思っている。

 

今回はこの第九では無くて交響曲第3番「英雄」や、トリプル協奏曲(ピアノ、ヴァイオリン、チェロとオーケストラの協奏曲!)などを演奏するけれど、その曲たちにもベートーヴェンの生きるエネルギーは充分満ち溢れていて、それは21世紀の東京で毎日忙しく奔走している僕らにも絶対に響くメッセージ性を持っていると思うんだ。

 

そしてこれらの中期の作品を書いた時、ベートーヴェンは既にこの詩「歓喜に寄せて」に出会っていた訳で、ここに謳われるメッセージは僕らが今回演奏する作品の中にもきっと生きていると僕は信じている。

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